「レシピがないと、味付けがどうしても決まらない」
冷蔵庫にある食材を見て、パッと味を決められる人がいる。一方で、同じ食材を前にしても、レシピを検索しないと一歩も動けない人もいる。この差は、センスや経験の量だけの問題じゃないかもしれない。
この記事では、レシピが「配分」として教えてくれていることの正体を、味の仕組みから解説する。ここで紹介する2つの関係性さえ知っていれば、レシピなしでも味の見当をつけられるようになる。
こんな人に読んでほしい:
- レシピを見ないと味付けが決められない人
- 「隠し味」が具体的に何をしているのか知りたい人
- 今ある食材で、感覚的に料理を組み立てられるようになりたい人
結論:レシピが決めているのは「対比」と「抑制」のバランスだけ
レシピに書かれている「醤油大さじ1、砂糖小さじ1」という数字は、複雑に見えて、実はたった2つの関係性の組み合わせでできていることが多い。
| 関係性 | 何をしているか | 身近な例 |
|---|---|---|
| 対比効果 | 違う味を少し足して、片方を引き立てる | スイカに塩、かぼちゃに塩、あんこに塩 |
| 抑制効果 | 違う味を足して、とがった部分を和らげる | 酢の物に砂糖、甘辛だれ、野菜炒めの醤油にひとさじの砂糖 |
レシピを見ないと不安になるのは、この2つのどちらを、どのくらいの量でやればいいかが感覚として身についていないからだと思う。逆に言えば、この2つさえ体で分かってしまえば、レシピは「必須」ではなく「参考」になる。
対比効果|「引き立てる」ための味の足し方
スイカに塩をかけると甘く感じる、というのは知っている人も多いと思う。これは「対比効果」と呼ばれる仕組みで、違う種類の味を少しだけ加えることで、元の味がより強く感じられるようになる現象だと言われている。
人の舌は塩味を先にキャッチしやすい性質があるとも言われている。塩味を感じた直後に甘味を感じると、実際以上に甘く感じることがあるようだ。塩をかけたから糖度が上がるわけではない。感じ方が変わっているだけ、というのがポイント。
蒸したかぼちゃに塩をひとつまみ振ると、何もかけないより甘く感じることがある。対比効果はこういう場面で使われている。
対比効果を使うときのコツは「入れすぎない」こと。目的はあくまで元の味を引き立てることなので、足した味の方が主張してしまったら意味がない。目安は「味として気づかれるかどうか」ギリギリの量。
抑制効果|「和らげる」ための味の足し方
対比効果と混同されやすいが、性質が違うのが「抑制効果」だ。こちらは、片方の味がもう片方の刺激そのものを弱める働きを指すと言われている。
酢の物に砂糖を入れると酸味のとがりが丸くなる。コチュジャンや甘辛だれに甘味を合わせると、辛味の刺激が和らぐ。野菜炒めの醤油にひとさじの砂糖やはちみつを足すと味がまとまるのも、塩味・うま味のとがった部分を甘味が和らげているからだと考えられる。
対比効果とは逆で、抑制効果は「気づかれない量」ではなく、ある程度しっかり効かせて初めて機能する。醤油とみりんを1:1で合わせる甘辛だれの黄金比が定番になっているのも、そのくらいの比率でようやく醤油のとがりが抑えられるからだと思われる。
レシピなしで味を決める3つのステップ
目の前の料理に対して、この順番で考えると味の方向性が見えやすくなる。
① まず「主役の味」を決める
甘い料理にしたいのか、しょっぱい料理にしたいのか。うま味を前面に出したいのか。ここが決まらないと、対比も抑制も使いようがない。
② 味見して「何が足りないか」より「何がとがっているか」を確認する
「味が薄い」と感じたら対比効果(少量の違う味を足して主役を引き立てる)、「味がきつい・単調」と感じたら抑制効果(ある程度の量で刺激を和らげる)——どちらの状態かを見分けることが、次に何を足すかを決める判断材料になる。
③ 少量ずつ足して、その都度味見する
対比効果を狙うときは特に、一気に入れると簡単に足の味が主役を超えてしまう。ひとつまみ入れて味見、を繰り返す方が失敗しにくい。
まとめ
- レシピの配分は、多くの場合「対比効果」と「抑制効果」という2つの関係性の組み合わせでできている
- 対比効果は少量で「引き立てる」働き(スイカに塩、かぼちゃに塩)
- 抑制効果はある程度の量で「和らげる」働き(酢の物に砂糖、甘辛だれ)
- 味見のときに「薄い」のか「とがっている」のかを見分けると、足すものが決まる
レシピが手放せないのは、才能がないからじゃない。ただ、この2つの関係性がまだ体に染み込んでいないだけだと思う。次に料理をするとき、味見をしながら「これは引き立てたいのか、和らげたいのか」と一度だけ考えてみてほしい。それだけで、レシピを見る回数が少しずつ減っていくかもしれない。
味覚の基本や、スパイスの組み合わせ方についてはこちらでも詳しく書いている。
→ 関連記事:おいしさの仕組み|味覚の5つの基本とスパイスの組み合わせ方 - 豊のたね
→ 関連記事:味覚が鈍る原因|甘いもの・濃い味が感度を下げる仕組みと戻し方 - 豊のたね
※この記事は個人の体験と調査に基づくものです。医療・栄養のアドバイスではありません。気になる方は専門家にご相談ください。